広島高等裁判所 昭和26年(う)270号 判決
なる三個の態様にぞくする各行為に限るのであつて政府の発行する印紙に紛らわしい外観を有する印影を生ずべき器具の製造は何等同条が処罰の対象としていないものと解するが相当である。かかる解釈の正当なることは同条第一条第一項の文理解釈上肯定せらるべきものであるのみならず同条がその後改正せられた際の経緯に徴しても一層明瞭である。即ち印紙等摸造取締法は昭和二十二年法律第百八十九号として公布制定せられたものであるが当時の第一条第一項は政府の発行する印紙に紛らわしい外観を有するもの又は印紙税法第六条但書の規定により印紙税額に相当する現金の納付があつたことを表わす税印の印影にまぎらわしい外観を有するもの若くはこれに紛らわしい外観を有する印影を生ずべき器具はこれを製造し輸入し販売し頒布し又は使用してはならないとあつたところ昭和二十三年法律第百八号により改正せられ右第一条中の税印の印影の下に「若しくは取引高税法第十一条但書の規定により現金を支払つて交付をうける取引高税証紙」の文字が挿入せられ同項に同条中のこれを「これら」に改められ更に外観を有する印影の下に「若しくは表示」の文字が挿入せられたのである。ところが取引高税証紙の廃止により更に昭和二十四年法律第二百八十五号により改正せられ、前回の改正の際に挿入せられた文字は削除された結果再び制定当時の条文と同一の条文に還つたのであるこれら改正の経過にあらわれた文字の挿入或は改正の態様に徴するときは政府の発行する印紙に紛らわしい外観を有する印影を生ずべき器具を製造する行為が処罰の対象とならないものと解することの正当なることが了解せられる、しかるに原判決は被告人の取引高税印紙に紛らわしい外観を有する印影を生ずべき写真凸板四個を製造した行為を印紙等摸造取締法第一条第一項第二条に該当するものと認めこれに対して有罪の裁判を言渡したのであつてこれは弁護人所論の如く罪とならない行為に対し法令を適用した違法を犯したものといわねばならない。而して右の違法は判決に影響を及ぼすこと明かであるから論旨は理由あり原判決中被告人に関する部分は破棄を免れない。